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Appleが成功し続けてきた理由の一つ「絶対優位のデザイン戦略」とは


さてさて今回は「Apple Design」という分厚い冊子に興味深いことが書かれていたので、
その一部分をブログを通してみなさんにシェアしたいと思います。







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「Apple Design」とは


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数名の教授や会長・専門家らがAppleやApple製品のデザイン的な部分を中心に丁寧な分析・解説がされている分厚い本です。
歴代のApple製品の写真も多く載っています。

この中から、大学の教授やインダストリアルデザイン団体協議会の会長なども務めたペーター・ツェク氏による文章が印象深かったので
そのまま抜き出してみます。



絶対優位のデザイン戦略


Appleが自らを業界のテクノロジーリーダーと標榜したことは一度もありません。たいていは、まず既存のテクノロジーの長所を取り入れ、次に個々の製品の革新的な機能や用途に応じて適切な変更を加える、という手法を取ります。
純粋に技術面だけを見れば、他社製品と比べてApple製品が特に優れているわけではありません。
常に他社製品と違っているのは、使用感です。

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Appleの新製品、iPhoneを紹介する時に、スティーブ・ジョブズは、実に鮮やかかつ印象的な方法で、当時市場に出ていたスマートフォンと比較しながら違いを示していました。Palm,BlackBerry,Nokia,Motorolaの各社の製品はすべて、キーボードやディスプレイのデザインに、ある種の類似性がありますが、新しいiPhoneはこうした既存モデルとは劇的に異なっていました。



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一見したところでは、この製品カテゴリーに入れるにはまったく異質で、すっかり別の製品のように思えました。そして実際にその通りなのです。
当時、市場に出回り、利用されていたスマートフォンと比較すると、iPhoneは根本的に新しいユーザインターフェイスを提示したのです。
AppleのiPhoneは、機能の集約と使用時の柔軟性の点で、他のどの製品よりも段違いに優れています。とはいえ、実際のところ,できることといえば、他社製品とそれほど大きな違いがあるわけではありません。

iPhoneは、とにかく操作が簡単で使い易いのです。

柔軟性の高いユーザインターフェイスとタッチスクリーンによって、インターネットブラウザからiPod,そして携帯電話のユーザインターフェイスとして使うことができます。ユーザは、大きな努力や深い知識がなくても、さまざまな機能領域から好きなものを選択できます。一目でわかるように作られているので、使いこなすための操作説明は、一切必要ありません。
iPhoneの決定的な優位性は、より大きなタッチスクリーンキーボードを使った文字入力を可能にした点です。当時市場に出ていた他社製品には、柔軟性に欠けるプラスチック製のキーボードが付いているだけでしたが、このキーボードは実際のところ,人間の指で操作するには小さすぎました。



iPhoneによってAppleは、スマートフォンに関する私たちの理解と期待を、まさに一夜にして一変させてしまいました。この成功の鍵となったのが、またしてもデザインです。iPhoneは独立的かつ自律的で、次世代スマートフォンの新しいアーキタイプ(元型)となりました。
このデザインにより、競合他社はAppleの足跡を追うようにタッチスクリーン式の携帯電話を作らざるを得なくなりましたが、必然的にiPhoneとの類似性が強く出てしまうことは避けられません。Appleがすでにデザイン的特徴の大部分をぎりぎりのフォルムの必須要素レベルにまで削り落としているため、後続の各社は多かれ少なかれ「コピーキャット(模倣者)」の役割を担わされることになり、結果的に、ある程度デザインレベルが引き上げられることになります。

この成功の秘訣のもう一つの要素は、デザインの明瞭さと簡潔さです。これを実現するためにAppleは、その当時はドイツを拠点とする数社しか行っていなかった方法で、デザインに基準や標準を設定する方針を採用しています。
最後に大事な点を一つ。
製品ラインはまったく異なるものの、Appleのデザインが、Braunのデザインと比較されるのはこのためです。



Braun Sk61

ブラウン (企業) – Wikipedia




Braunが、60年代から70年代にかけて、HiFIコンポーネント、フィルムカメラ,キッチン用品、電気カミソリに新しい独自のデザインスタイルを持ち込み、当時のプロダクトの世界に革命をもたらしたように、
今日のAppleも、新製品を送り出すごとに、デザイン性と使い勝手において、新しい基準を打ち立てています。
この実現にあたりAppleのチーフデザイナー、ジョナサン・アイブ(Jonathan Ive)は、同じくBraunの当時のチーフデザイナー,ディーター・ラムス(Dieter Rams)によって開発されたアプローチ,すなわち「優れたデザインとは、できるだけデザインを排したデザインである」と同様のアプローチを用いています。つまり、製品を全体として捉え、できるだけ明瞭かつ簡潔にデザインするのです。
カミソリもミキサーも、コンピュータも携帯電話も、製品の種類に関係なく、一見したところでは、どれも驚くほど目立った特徴はありません。デザインが目指しているのは、いわゆる絶対優位のデザイン戦略です。



ディーター・ラムス – Wikipedia




絶対優位の戦略という概念は元はゲーム理論から発生した概念で、戦略的思考の科学です
ゲーム理論の中では、絶対優位の戦略について次のように述べられています。

「相手プレイヤーがどのような戦略を取ろうとも、もう一方の戦略よりこの戦略の方を選ぶことでより大きな効果が得られる場合、プレイヤーは絶対優位の戦略を持っていることになる。このような戦略を持っている場合、決断は極めて簡単である。相手の動きを気にすることなく、この絶対優位の戦略を選ぶだけだ。」



スティーブ・ジョブズとAppleが、開発とデザイン、そして新製品の市場投入で行ってきたことを見ると、ジョブズとAppleは絶対優位の戦略を持っているということができます。
Appleの場合、たとえAppleが何をしたとしても、Appleは正しいことをしていると確信しているのです。そしてその過程では、他社がしていることに関しては一切関心が無いように見えます。ゲーム理論に従えば、絶対優位のデザイン戦略とは、個々の製品カテゴリーにおいて新しいデザインの標準、すなわち、そのシンプルさを超えることが不可能に近いために、他のメーカーは必死に無視したり否認したりせざるを得ないような標準を打ち立てることのできるデザインスタイルを持つことです。
競合他社にとって一番の問題は、このプロダクトデザインが、特定の製品の機能や使用感を完璧にするためのもんではないにせよ、ほぼ常に、総合的な最適化を目指した配慮がなされている点です。
このようにしてユーザは引きつけられ、新しい便利さに馴染み、甘やかされ、この利便性なしではいられないようになるのです。さらに、ユーザは今やこの利便性を当然のこととして期待しているので、製品カテゴリー全体のベンチマークや標準までもが引き上げられることになります。
競合他社は、アーキタイプの製品のデザインに比較的似せることなくユーザのこの要求を満たすのは難しいことを悟ることになります。残される唯一の選択肢となるのは、機能やデザインの似た製品をずっと低価格で提供するという価格戦略です。しかし、アーキタイプとなっている製品のブランドイメージに意味を見出している消費者は、価格が安いという理由だけでは別の製品を購入しようとは思わないものです。



絶対優位のデザイン戦略を実現できた企業は、概して、市場でのある程度の成功が見込めることになります。
絶対優位のデザイン戦略を味方につけた製品は、市場に投入された時点で、新しいデザイン標準を確立していない製品と比較すると、より大きな注目を集めます。こうした製品のほうが、伝達するのも、メディアや消費者の興味を呼び起こすのも、はるかに簡単かつ単純なのです。このような製品が発表されると、大勢のバイヤー(買い手)が、まず自分が手に入れて自慢したいと思います。
このようにして、出だしから異例の販売記録が打ち立てられ、製品への興味と購入動機がますます高まります。



ここまででお分かりのように、企業が絶対優位のデザイン戦略の実現への注力は、収益につながることなのです。
しかしそのためには、求められるものを正確に把握し、それに応じて決断を行うことが不可欠です。このことは、iPadの開発と市場投入にも当てはまります。
このような製品を現実に待ち望んでいた消費者がいたわけではなく、一方で、Appleの責任ある立場にいる人間たちは、現実的に市場がまったく存在しない製品を競争の激しい市場に送り出すことを止めませんでした。
iPad発売に関するメディアの反応はただ事ではなく、世界中のほぼすべてのメディアがiPadを報道しました。
『The Times』、『Financial Times』、『The New York Times』、『Die Welt』、『Suddeutsche Zeitung』といった紙面の第1面には、スティーブ・ジョブズとiPadの写真が大きく掲載されました。
フランクフルトの『Allgemeine Zeitung』紙は、面白い例外を見せてくれました。第1面に掲載した点は他紙と同じですが、「iPad」という言葉の比喩として、目元の化粧を落とすコットンパッド「Eyepad(アイパッド)」という表現を使ったのです。
このときにAppleの新製品を無償で取り上げた報道の価値を広告に換算すれば、数百万ドルに相当します。自社製品のPRに関して、これに少しでも近い大成功を収めた例を報告できる企業は、競合他社の中に1社もありません。Appleは新製品を発表するたびにメディアの注目を集めるという恩恵を受けていますが、競合他社は多額の費用を投資せねばならず、それでもそれに匹敵するような効果すら得られてはいません。



Appleが発表する新製品にはメディアでさえこのように大きな興味を示すのですから、増え続ける大勢の一般消費者に、この熱狂ぶりが飛び火するのも当然です。新製品の発売を、製品を実際に購入できるようになる随分前から熱心に待ち望む人々が大勢います。その時が来たら真っ先に手に入れたいと熱望する人がたくさんいるので、ストア前の行列に1日半並ぶことにも価値があるのです。社会主義国でしか目にすることのなかったこうした行動は、Appleの場合、今や当たり前のことになりました。この点も、絶対優位のデザイン戦略には持つ価値があることが分かります。

結局のところ、
Appleが自社と競合他社との差別化を図る際に用いているのは、常にデザインなのです。



まとめ


Appleがイノベーションや成功を度々起こす理由について書かれた記事をいくつも読んできましたが、
今回抜き出した「絶対優位のデザイン戦略」についての文章が最も納得しました。

Apple製品が競合他社の製品より優れている点といえば、機器同士のソフトウェア面でのシームレスな連携、合理的なインターフェイス,iTunes/iCloud/App Storeなどを含めた巨大なエコシステム,周辺機器・アクセサリー類の豊富さなどなど、デザイン以外でも挙げたらいろいろ出てくるくらいですが、
根本的な要因はどうやら「デザイン」にあるようです。
(追記:もっと言えばジョブズの強い信念や情熱かも)

消費者向けの製品・サービスを手がけているだけあって、余計に「デザイン」の重要性が高いのかもしれません。



Wikipediaの「ジョナサン・アイブ」のページにもこんなことが書かれています。

『アイブは「アップルをおそらくもっとも有名たらしめているもの — デザイン — を体現している」』

アップルをもっとも有名たらしめているもの=デザイン。
そしてそのAppleのデザインを体現している人物であるアイブが、Appleにとっていかに重要な存在であるかが読み取れます。




今回取り上げた「Apple Design」という本はAppleのデザインについて客観的に詳しく丁寧に分析されており、とても勉強になります。
特に製品やサービス開発に関わっている方には強くオススメできる一冊だと思います。
実際この本に書かれていたことに強い影響を受けて、急遽自作アプリの仕様を変更しました。

ぜひご参考に。

ではっ


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