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AppleのSmart Keyboardに対する意図(前編)

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賛否両論の激しいApple純正のiPad一体型キーボードです。



僕も10.5インチiPad Proとともに手に入れ、1ヶ月以上、屋内でも屋外でも使い込んでみたので、
その使用感レビューとともにAppleのSmart Keyboardに対する意図まで考えてみたいと思います。



また、筆者はiPad Air2用にbelkin製のハイエンドBluetoothキーボードを2年半使い込んできました。
それを踏まえ、他のレビューでは見られないほど多角的な視点から私見と写真をたっぷり練り込んで、Smart Keyboardとbelkinキーボードを比べていきたいと思います。


US配列を選択しましたが、当記事では配列的な差については特に言及しません。
また、9.7インチ版との比較もしません。

書きたいことを書いていたら長くなってしまったので、記事を3分割しました。




目次

– 前編
1.【belkinキーボードを2年半使ってみて】
2【抜群の変形性、柔軟性、取り回し】
3【トップクラスの軽さ】

– 中編
4【12インチMacBookとの差】
5【キーボードの性能について】
6【ディスプレイの角度調節ができない】
7【落ち着いたシンプルな容貌】

– 後編
8【Apple Pencilのさりげないサポート】
9【有線接続のメリット】
10【追加されたキーボードショートカット】
11【AppleのSmart Keyboardにおける意図】
12【どんな人に向いているのか】






1. belkinキーボードを2年半使ってみて



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まずは長くお世話になったbelkinのハイエンドキーボードのことから。

僕が使用していたのは「QODE Ultimate Pro Keyboard Case for iPad Air2」で、iPad本体に専用の背面ケースを付け、キーボード側のヒンジが背もたれの役割を果たします。
当ブログの「iPadキーボードまとめ」ページにて複数のレビューをまとめています。

ヒンジデザインはサムスンの「Galaxy TabPro S」が似ています。


belkin, qode, ultimate pro

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ほとんどのキーボードケースは背面ケースとキーボードは分離できませんが、Ultimate Proは2カ所の磁力のみでヒンジ機構を実現している点が特徴的です。
この分離仕様により、iPadをキーボードから簡単に取り外せるだけでなく、iPadを縦向きにしてもキーボードに設置、タイピングできるデザインとなっています。

また他社製と大きく違う点として、電源ボタンが存在しないマグネット式の完全な自動On/Off仕様で、iPadを立てかけた時だけでなく、ヒンジをキーボード底面へ折り返して吸着させれば電源Onとなり、単体キーボードとしても使えるようになっていました。

もっとも多くタイプするアルファベットキーを優先的に大きくレイアウトしたことにより、キーピッチ最大18mmを実現していた点もユニークで、
背面ケースのスピーカー部分は前面へ向かって音が流れるようにデザインされているなど(belkinはこれをサウンド・フロー・デザインと呼んでいます)、
市場の中でもとくに斬新な一体型キーボードだったと言えます。

さらに航空グレードのアルミニウムを使うなど、機能的にもデザイン的にも非常に品質の高い一体型キーボードで、現在リリース中の外付けキーボード特化テキストエディタ「Coard」も、このbelkinキーボードを手にしたことが開発し始めたキッカケでした。
(その当時はエディタではなくカスタムキーボードのみで、iOS9もiPad Pro 12.9inchもSmart Keyboardも発表すらされていないiOS8の頃でした。)

満足度は高かったものの不満点もけっこうあり、その一つが背面ケースを装着しないといけないことでした。
ケースはデバイスのサイズがひとまわり大きくなってしまうだけでなく、重みも増してそのデバイス本来の使い心地が損なわれてしまうため、
僕はスマホでもタブレットでもケースは装着しないようにしています。


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いくら物理キーボードが便利とはいえ、性格的にやはり背面ケースには耐えられませんでした。
そこでついに日曜大工(いわゆるDIY)を実行。


背面の3分の2のサイズで、極薄なマグネットシートをAmazonで購入して貼り、さらにその上にシルバーのテープを貼って耐水性・耐油性を高めつつ、目立たなくしました。
これでbelkinキーボードのヒンジが磁力で密着するようになり、角度の無段階調節ができます。

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(右側、専用背面ケースの中央、光が反射している部分に磁石が内蔵されている)



それだけでは滑って倒れてしまうため、滑り止めとしてゴム製の隆起した透明物質を接着。
iPad Air2の美しい背面は、写真を載せたくないほどとてつもなく見苦しくなりましたが、その代わりiPadを裸のままキーボードに立てかけることができるようになり、全体的に軽くなっただけでなく、背面ケースのときよりも緩やかな角度でタイピング&タッチ操作をすることができるように工夫しました。


IMG 0295
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これは非常に使い勝手が良かった。
そして今度は、見た目の見苦しさが気になり、iPadの素の背面が恋しくなります。



しかしそんな葛藤とも、Smart Keyboardによって完全に訣別です。

比較に使うこのUltimate Proは、Smart Keyboardと同価格帯であり、一体型キーボードの中でもファッション性と変形性が高いので、Smart Keyboardとの比較にもってこいの製品だと思いますし、
ロジクールのSmart Connectorキーボードではないところが、読者さんにとっては新鮮な比較になるかと思います。





2. 抜群の変形性、柔軟性、取り回し



結論から言えば、10.5インチ版のSmart Keyboardにはかなり満足しています。
少なくともbelkinキーボードよりは満足度が高いです。

なかでも特筆すべき点は、なんといってもその優れた機動性とモバイル性です。

Smart Keyboardの最も優れた点は、iPad本体との一体感、変形性、軽量性、取り回しの良さといった、タイピングとは別のところにあると思っています。

Smart Keyboardは変形能力が格段に高く、Apple公式では3種類(Type, Watch, Cover)しか紹介されていませんが、
厳密には倍以上の7種類存在すると言ってもいいでしょう。


その7種類とはなんでしょうか?
説明しやすいように当記事独自の名付けをすれば、
・ラップトップ
・スタンド
・クローズ
・キャンバス
・ハンドヘルド
・カメラ
・ブラウズ

です。


言葉で説明するより写真を見た方が早いでしょう。

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そして最後の2つ「カメラ」「ブラウズ」は個人的に発見したものです。

「カメラ」はiPad本体を持ちながら撮影できるような畳み方のこと。


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「ブラウズ」はディスプレイ角度が「キャンバス」と「ラップトップ」の中間に位置するような畳み方です。


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傾斜の浅い「キャンバス」がペンシル利用やスクリーンキーボードのタイピングに最適だとすれば、
「ブラウズ」はコンテンツ閲覧とジェスチャー操作に最適で、まさにブラウジング(Webサイト、ニュース、雑誌etc)に向いています。

さらにフットプリントがキーボード面積だけなので、「キャンバス」よりもフットプリントが小さくなり、天井のライトも少し映り込みにくくなります。

この「ブラウズ」モードは、タブレットを使うのにすこぶる最適な角度を提供してくれるにも関わらず、Appleが正式に認めず、ほとんど知られていないのは非常にもったいないです。


この畳み方は吸着力は弱いものの、一応マグネットで固定されるので強めのジェスチャーで崩れることはなく、最低限の実用性を持っていると思います。
持ち上げると簡単に崩れてしまいますが、上から押さえる力には強く、手を置いてのペンシル操作などにも十分対応できます。


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凄いのが、これらすべての変形モードを「たった一枚のカバー」で実現していることです。
Smart Coverの視点からだと当たり前に思われるかもしれませんが、
一体型キーボードの世界では斬新です。


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iPad Proとともに約2ヶ月、毎日使い込んできた限り、
Smart Keyboardはこの柔軟な多モードによる取り回しの良さがバツグンに素晴らしいと気づきました。


belkinのUltimate Proも「タブレットの取り回しの良さを潰しにくい」という点では、一体型キーボードの中でも群を抜いていたと思いますが、
Smart Keyboardの優れているところは、物理キーボードを装着したままにも関わらず、タブレットとしてのさまざまな使用スタイルを殺さないどころか、上手に拡張していることです。


この柔軟性の高さは現行の他社キーボードでは実現できないでしょう。


例えば「ハンドヘルド」モード。
Smart Keyboardなら背面にそのまま畳んでしまえば、多少の厚みと重みがあるとはいえ、一枚のタブレットのように使えます。


しかしbelkinキーボードはどうでしょう。
キーボードを外したら外したでキーボードが邪魔になります。
特に外で周囲にベンチなどがない環境で立ちながらiPadを使いたいときは、きわめて不便です。
ラップトップスタイルが前提のデザインのため、このような状況に対応しきれないんです。

さらに背面ケース装着中なので、iPadにも多少の厚みと重みが付いてきます。


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(※Canvas-modeはともにメーカー非公式)


上3つの比較写真を見るとよくわかりますが、Smart Keyboardはどの変形においても本当にムダがなく、デスク上のスペースを最小限しか占有しません

しかしbelkinのUltimate Proはこれでも、一体型キーボードの中では変形能力が高いほうなんです。



たしかにSmart keyboardは畳み方が入り組んでおり、慣れる・覚えるまでは時間がかかります。
僕は畳み方に慣れるのに丸一日かかりました(逆に言えばそれだけです)。

その代わりこの折り紙デザインによって、その「一枚の物体」をムダなく最大限に活用できるようデザインされている点が、Smart Keyboardのデザインの優れているところです。
取り回しの良さに比べたら、畳み方の複雑さは取るに足らない代償でしょう。

唯一残念なのが、ポートレイト(縦向き)で立たせることができないことです。
それでも「面」が少ないSmart Coverはここまで多モードではないでしょうし、
Smart Keyboardの多モード性はもっと評価されるべきだと思います。


「ブラウズ」モードは当記事執筆中に発見したんですが、
僕が知る限り、日本語でも英語でも「カメラ」「ブラウズ」モードを紹介しているレビューは当記事だけです。


ちなみにスタンドモードは、購入当初は垂直すぎて簡単に手前へ倒れそうな感じだったんですが、何度も折りたたんでいるうちに素材が柔らかくなったのか、重心がいい感じに後ろへ下がり、手前に倒れにくいという意味での安定感が増しました。


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(リアカメラ側が足場よりも背後へ出る程度に馴染んだ)




「キャンバス」モードはSmart Coverのように実用的なんですが、スタンドモードの安定化の設計のためか、三角部分がキーボードにマグネットで吸着してしまいがちです。

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Appleが公式でこれをアピールしないのは、ここに理由があるかもしれません。




3. トップクラスの軽さ



軽さにおいては、一体型キーボードの中ではトップクラスというよりナンバーワンではないでしょうか。

こちらのブログ記事から情報を拝借しますと、
10.5インチ版Smart Keyboard(JIS)の重量が「約244g」、セルラー版iPad Proが「約470g」なので、合計「約715g」と700gを少し超える程度です。


それに対し、iPad Air2 + belkinキーボードのほうはどうでしょうか?

まずAir2のセルラーモデルが「443g」、
背面ケースが「140g」、
キーボード単体が「362g」、

3点セット合計で「945g」です。


バッテリーを内蔵しているため、キーボード単体だけで既にSmart Keyboardより100g以上重く、さらに100g以上の背面ケースを装着するのです。

結果、920gの12インチMacBookよりも重くなります。
さらに10.5インチiPadに対する、Air2本体の約30g分の軽さはチョンと潰され、
belkinセットはSmart Keyboardセットより「250g」も重くなってしまいます。

また、キーボードとの脱着がいくら簡単でも、背面ケースがあるのでiPad本体はけっきょく重いんです。

Smart Keyboardならキーボードを外せば、一瞬で「素」のiPadに戻ります。

「簡単に外せない」という制約感のもとでその重みに我慢することと、
「手軽に外せるけどこのままでいいや」という気持ち(意図的な選択)のもとでその重みと付き合うことには、気持ち的に雲泥の差です。


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(ぱっと見は似ているが、250gもの重量差がある)



では独自のDIY版はどうでしょうか?
背面ケースを差し引きばいいので、ざっくり計算で「810g」程度です。
それでもSmart Keyboardセットより100gオーバーです。


ちなみに12.3インチのSurface Pro4本体が「767g」程度、12.9インチiPad Pro本体(Wi-Fiモデル)は「713g」と、
そのどちらも10.5インチのSmart Keyboardセットと同等か、それより重くなります。



他社キーボードの大多数は、Bluetoothによるバッテリー内蔵か、背面ケース装着型です。
このどちらか一方の仕様である時点で、Smart Keyboardの軽量さにはかなわないだろうと思われます。

例えば、belkinは軽さをアピールするUltimate Liteキーボードケースも販売しています。
具体的な重量は公表されていないものの、Smart Keyboardより重いことは想像に難くありませんし、Ultimate Proと違ってキーボードと背面ケースを脱着できません。


僕としてはbelkinキーボードの重さの件があったため、9.7インチiPad Proが発売されたとき、Smart Keyboardに対して「重い」という不満の声が多く上がったことには驚きました。

その不満の源流を観察してみると、どうやらキーボードの付いていないSmart Coverと比べていること、もしくはiPad単体での重さとの比較に事の発端があるようでした。


ここでハッキリ述べておきますが、
Smart Keyboardは一体型キーボードとしては圧倒的に軽いです。

バッテリーを内蔵せず、背面ケースを強要せず、しかもあの薄さにおさめるというデザインを実現している時点で、これ以上軽くするほうが現実的ではないはず。

しかもiPad本体から手軽に外すことができるわけです。
外したあとのキーボードが邪魔なのは、すべてのキーボードに言えると思います。

確かに470gに対して240gの追加は大きいですが、
これ以上を望むのであれば、一体型キーボード自体を選択肢から外すしかないですよね。


裏を返せば、裸のiPad単体やSmart Coverと比べてしまうほど一体感の強いデザインを実現している、ということではないでしょうか?

この軽さは、先ほど述べた「一枚の物体をムダなく最大限に活用できるようデザインされている」ことによる恩恵でもあるように思います。



(中編)へつづく ->





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