先日9.7inchのiPad Proが発表され、iOS9.3もリリースされました。
さっそくアップデートして使ってます。
ハードウェア的には頑張っているように見えますが、ソフトウェア面がどうも貧弱なので、キーボードまわりについて個人的に気になっている問題点を具体的にあげていきます。
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キーボードにおけるiOSの問題点
この「【iOS9】iPad × カスタムキーボード × 外付けキーボードの極意」を自分で書いていて感じましたが、とにかく小難しいんです。
「カスタムキーボード名の下に表記された言語が外付けキーボードの動作に影響する」なんていう暗黙のルールに気づくユーザーはあまりいないんじゃないでしょうか。
皮肉にも、シンプルさを売りにしているiOSではハードウェアキーボードを組み合わせるとMacよりも煩わしさが増します。
iOS7でキーコマンドAPI(アプリケーション・プログラム・インターフェイス)の提供、iOS9でキーボードショートカットリストをサポートしたものの、外付けキーボードまわりのエコシステムはまだまだ未成熟です。
ではどんなところが未成熟なんでしょうか。
ショートカットを共通化する仕組みがない
まず、APIのサポートと言ってもキーコマンドを実装しやすくなっただけで、コマンドを共通化する仕組みはありません。
例えば、印刷機能を起動するAPIがあったとして、それを組み込むと同時に「Command + P」もアプリに組み込まれる、というような共通化をどんどん推し進める仕組みがiOSにはないんです。
(OS Xがどういうふうなのかも分かっていませんが。)
要するに、「空気を読め状態」になっていて、開発者はAppleアプリやOS Xを参考にキーコマンドの共通性を高めないといけません。
また、キーコマンドの実装を開発者に促すような動きも特にないため、サポートされるかどうかもそれぞれの開発者に依存しているのがiOSの現状です。
Apple自身も(Safariやメールはかなり増やしているものの)Pagesはまだまだ少ないです。例えばプリントオプションウインドウはSafariなら「Command + P」で出せますが、Pagesは対応していません。
カスタムキーボードの7つの問題点
自分は実際にカスタムキーボードを作っているのである程度理解しているつもりなんですが、
問題点はけっこうたくさんあります。
【①システムキーボードに使われている「単語予測・変換」は開発者には提供されていない】
アルファベット圏はアルファベットをそのまま入力すればいいんでしょうが、日本語や中国語となると変換なしでは使ってられませんよね。
日本語キーボードが個人からほとんどリリースされていないのも、変換システムの技術的な難しさが原因としてあると思います。
【②カスタムキーボードでは文字列を選択することが不可能】
これもセキュリティ的な問題ですが、カーソルを動かすことはできるものの、Shift+矢印キーのように文字列を選択することができません。
それに伴った機能(コピー・カット・取り消し・やり直し)もカスタムキーボードでは実装できないんです。
【③外付けキーボードで入力されたキーコマンドを知ることは一切できない】
アプリでは可能なのでキーコマンドに対して好きなように機能を割り当てられますが、カスタムキーボードで知ることができないのは残念です。これもセキュリティ的な問題。
【④キーボードの追加手順がわかりづらい】
カスタムキーボードが登場してから月日が経ちましたが、そのインストール手順は相変わらずそのままで、ユーザーはいくつもの階層を進んでいかなくてはなりません。
Fleksyにいたっては動画で説明するありさまです。
【⑤フルアクセスの許可のときに出る警告文がきつい】
これです。
いかにも開発元を悪者に仕立て上げるような言葉使いではないでしょうか。クレジットカード情報が盗まれるとでも言わんばかりで、ボタンも「許可しない」が太字にされている始末(泣)
実際、この警告が出た時点でキーボードを消し、ストアのレビューに星1を付けるユーザーが続出したそうです。
【⑥カスタムキーボードの言語とデフォルト言語が一致しないと動作がおかしくなる】
これは「【iOS9】iPad × カスタムキーボード × 外付けキーボードの極意」で詳しく書きました。
キーボードリストの一番上のシステムキーボードが、暗黙のうちに外付けキーボードのデフォルトに設定されているんですが、これを知らないとユーザーにとっても開発者にとってもデメリットとなる可能性が高いです。
【⑦カスタムキーボード表示中は変換候補リストが消える】
カスタムキーボード表示中でも、外付けキーボードから(デフォルト言語で)文字入力はできますが、
日本語/中国語だと命綱の変換候補が消えてしまいます。
これを表示するには、⑥の両方の言語が一致しているという前提で、外付けのファンクションキーからカスタムキーボードを隠す必要があります。いま、よくわからないことを言ったかもしれません。
①や③のように単語変換やキーコマンドが開発者に提供されない中でのこの仕様ですからね。Coardのように外付けキーボードとのタッグを想定したキーボードにとっては厳しい仕様です。
外付けキーボードの4つの問題点
続いて外付けキーボードを使うときの問題点です。
【①Option,Controlの長押しによるショートカット表示に対応してない】
公式サイト(3月末時点)にOption, Controlキーの長押しによるショートカット表示への対応を公言しているにも関わらず、実際はできません。
iOS9.2の頃にはこの状態だったんですが、9.3になっても変わっていないようです。
時価総額1位になった企業がこのような凡ミスに気づかないのはヤバいんじゃないでしょうか。
【②キーボード切替をするのに2連打はしないといけない】
Control+Spaceでキーボード切替ができますが、まず一打鍵目でリストが表示され、二打鍵目でようやく次のキーボードに切り替わります。
僕が使用しているbelkinのキーボードは、独自のfn+Control切替で一打鍵で次のキーボードに切り替えることができ、重宝していました。
iOS9からこれが使えなくなったのは非常に残念です。
【③OS Xのようなショートカットのカスタマイズができない】
OS Xではアプリケーションメニューにある項目名が分かれば、いくらでも好きなショートカットに書き換えることが可能です。
iOSはそもそもメニューバーなるものがないので、このようなカスタマイズは実現不可能かもしれませんし、ヘビーユーザーの単なる偏った要望なのかもしれません。
それでもOS XにできてiOSにできないことなのは事実だと思います。
【④Command+Tabのリストとマルチタスクの時間軸が逆】
これはキーボードというよりiOSのGUIの問題です。
iOS9でホームボタンのダブルクリックで起動するAppスイッチャーが一新され、
Command+Tabで表示されるOS X風のAppスイッチャーも追加されましたが、
この2つは時間軸が左右逆なんです。
アルファベット言語が左から右へ文字を並べていくように、コンピュータ上の情報の展開も左を起点に右へ進んで行くパターンが一般的だと思います。
そう考えると、ダブルクリックのAppスイッチャーの時間軸が逆なんですよね。
右を起点に左へ遡ってるんです。
Command+Tabは左から右へ遡っていますし、OS XのMission Controlのフルスクリーンアプリケーションも、左から右へどんどん追加されていきます。
これはこれで悪くはないのでしょうが、操作感の統一という意味で、せめてCommand+Tabの時間軸と揃えるべきではないでしょうか?
まとめ
このように、キーボードまわりのエコシステムの完成度はまだまだ低く、いい循環ができているように思えません。
3月末に9.7inch版iPad Proが発表されたのを機に、ようやくAppleも「PC replacement」という言葉を強調してきました。
しかし、表面上はハイスペック端末にSplitViewやQuickType、Smart Keyboardと、本格さを醸し出しているようですが、実態はテキスト入力が貧弱な赤ん坊OSです。
先日のキーノートではハードウェア畑のフィル・シラーがiPadによるPC replacementを語っていましたが、ソフトウェア寄りの人がこういったことをじっくり語らないのが残念です。
確かにハードウェアとしては素晴らしいのかもしれません。
しかし「ラップトップの置き換え」という点で、いまのiPadはハードウェアが一人歩きしているだけに見え、
ソフトウェア側の進化のスピードもあまり期待できないのも、見えない(けど大きな)問題点ではないでしょうか。
英語ですが、この記事にもiOSでカスタムキーボードを作ることによる問題点があげられています。
The Trials and Tribulations of Writing a 3rd Party iOS Keyboard