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AppleのSmart Keyboardに対する意図(後編)

iPad Pro, 10.5, Smart Keyboard





(中編)からの続きの後編です。




目次

– 前編
1.【belkinキーボードを2年半使ってみて】
2【抜群の変形性、柔軟性、取り回し】
3【トップクラスの軽さ】

– 中編
4【12インチMacBookとの差】
5【キーボードの性能について】
6【ディスプレイの角度調節ができない】
7【落ち着いたシンプルな容貌】

– 後編
8【Apple Pencilのさりげないサポート】
9【有線接続のメリット】
10【追加されたキーボードショートカット】
11【AppleのSmart Keyboardにおける意図】
12【どんな人に向いているのか】






8. Apple Pencilのさりげないサポート



日本語・英語圏含め、他のレビュー記事ではほとんど触れられていないのですが、
Smart Keyboardは一応、Apple Pencilを簡易的にホールドすることができるのをご存知でしょうか?


まず一つ目は、カバーを閉じている状態。

ipad pro, 10.5, smart keyboard

ヒンジそばの平面に磁力があり、Apple Pencilを置くと吸着します。
iPadを逆さまにしても落ちません。
どこかで読んだんですが、この磁力は9.7インチ版では搭載されていないようです。

ただし簡易的なホールドにすぎないので、あくまで「とりあえず」の用途になると思います。


二つ目は、当記事で言う「キャンバス」モードのとき。

ipad pro, 10.5, smart keyboard

ヒンジ部分のマグネットに吸着するので、これまたペンを使わない時の「とりあえずの固定」として利用できます。


三つ目は、ラップトップスタイルのとき。

ipad pro, 10.5, smart keyboard

なんとiPadの背後にペンシルが収まるスペースがあるではありませんか(!)


これは完全に筆者が個人的に発見したものでして、
「カバーを閉じている状態のままラップトップモードにしたらペンシルはどうなるんだろう」
という疑問をもとに試してみたところ、この発見に至りました。
しかもちゃんと磁力で固定されますからね。

Appleが意図したものではないかもしれませんが、物理的にまったくムリはありません。
丁寧にやれば、一つ目->三つ目の状態への移行、もしくはその逆をペンシルを外さず・落とさずに行えます(オススメはしない)。

ipad pro, 10.5, smart keyboard

しかし、Surfaceのようにしっかり固定されるものではないですし、
ペンシル自体が転がりやすいため、
やはりペンホルダーなるものはあった方が良さそうです。
(ちなみに三角の内側でも磁力でペンを固定できます)


いろんなレビューを眺めていると、Apple Pencilホルダーが付いていないことに対する不満も目立ちます。

これはSmart Keyboardに限らず、iPadそのものやApple Pencilなど、Apple製品に通じるデザイン哲学を考慮して"あげる"必要があるかと思います。

Appleはボコッとはみ出す突起物を嫌い、丸石のようにその一個体で完結するデザインを好む傾向があるのは周知の通りです。
ですのでSmart Keyboardにペンホルダーを付けなかったのは、当然の流れと言えるのではないでしょうか。

それでもやっぱりApple PencilとSmart Keyboardは密着させて持ち歩きたくなります。
そこで僕が選んだ対処法は、バンド型のペンホルダーを使うこと。


ipad pro, 10.5, smart keyboard
ipad pro, 10.5, smart keyboard
ipad pro, 10.5, smart keyboard


これによってペンホルダーを装着したまま、カバーを開いたり閉じたりラップトップスタイルにしたりできますし、邪魔であれば外して使えばいいわけです。

閉じたときの位置で言えばヒンジ側の「くぼんだ面」に巻きつけるのが理想ですが(左上の写真)、
様々なモードに対応できるのは中央の面に巻きつけたときです。

筆者にはけっきょく邪魔だったので、いまは外して使うようになりましたが、
バンド型を巻きつけるというアイデアは、Smart Keyboardにおいては最も妥当な選択ではないでしょうか。


ちなみにこのベージュのペンホルダーはデザイン文具を扱う近所の本屋で1200円で手っ取り早く手に入れたもので、
United Bees社の「collora」ブランドのものです。

Apple Pencilよりも短く、黒系もなかったのが残念ですが、質感はとても良いのでApple製品とマッチします。

united bees, collora, pen holder
united bees, collora, pen holder

このペンホルダーは革製だと思いますが、「国産帆布」という岡山県倉敷市で製造されている生地の雑貨・バッグを揃えている会社ということで、
学生時代に倉敷へ足繁く通った身として、このペンホルダーには思い入れがあります。



9. 有線接続のメリット



一体型キーボードをお求めなのであれば、Bluetooth接続よりもSmart Connector型をオススメします。

Air2向けのbelkinキーボードは当然Bluetooth接続ですが、2年以上も使い込んでいると、「思い立ったときにすぐ入力!」ができないことに不満が募ってきます。
これは文字入力だろうとキーボードショートカットだろうと同じです。

たとえばSafariの検索窓でキーボードから打ち込み、どこかのウェブサイトをしばらく眺めていたとします。
賢いbelkinキーボードは一定時間(だいたい1分ほど)の入力がないと自動で接続が切れます。

そしてサイトの記事を読み終わり、「さあ次行こう!」と思い立ってcommand + Lによる検索窓フォーカスをしようとしても、
すぐにはできないのです。

他にもたとえばCoardアプリをタップして起動すると、テキストエディタが自動で編集モードになりますが、
文字を打ち始める、もしくはキーコマンドを入力し始めたつもりが反応せず、
「あれ?」と一瞬戸惑うのです。

この些細な積み重ねが、やがて大きな不満へと成長するわけです。
それはもう「賢いとはなんなのか?」と考え込んでしまうほどです。


Ultimate Proの大きな特徴の一つに、iPadとの一体化だけでなく単体のBluetoothキーボードとしても使える点があります。


ipad pro, 10.5, smart keyboard

さらに最大2台を登録することができ、瞬時に切り替える機能まであります。
たしかに新たに購入した「サイズの異なるiPad」でも使えるメリットはBluetoothならではですが、上記のごく基本的な不満がなくなることのほうが、たいていの人にとっては嬉しいのではないでしょうか?

少なくとも僕は、この2つの機能(単体キーボードOK、2台登録)から大した恩恵は受けませんでした。


また、室内に電話の子機などが混在している環境だと、干渉してかBluetooth接続がまったくできないこともありました。

一体型キーボードなら、無線接続であるメリットはあまりないと思っています。



10. 追加されたキーボードショートカット



iOS11の話ですが、システム機能のキーボードショートカットがいくつか追加されました。
一つはドックの表示、もう一つはスクリーンショット撮影です。


ドックの表示コマンドはcommandキーの長押しによるリストにも掲載されており、
command + option + D
でドックをヒョイッと表示させることができます。

これは2回連続でエッジスワイプをしないとドックを表示させることができないフルスクリーンアプリ(上部のステータスバーが非表示となっているアプリ)の場合に特に有用です。


一方、スクショ撮影コマンドには2種類あります。

command + shift + 3:ホームボタン+ロックボタンの同時押しと同等
command + shift + 4:撮影と同時にスクショ編集画面の表示


これはありがたい追加です。
Macと同じコマンドなので、Macユーザーならすんなり馴染めることでしょう。

Macも「〜3」で画面全体の撮影、
「〜4」でマウスポインタによる切り取り撮影が割り当てられています。



11. AppleのSmart Keyboardにおける意図



公式オンラインストアのレビューには「キーボードの手前が3mmほど浮く」という不満が散見されますが、僕が購入したものはまったく浮きません。

iPadを溝に設置した状態を横から見ても、キーボード手前が浮くような形状をしているとは思えませんので、
個体差で歪んでいるものがあるかもしれませんね。

Appleも企業としてリコールは避けたいと思うので、おそらく黙認しているんでしょう。


さて、Smart Keyboardがオススメできるかどうかを考える際に、「iPadで文章を頻繁に打つ人にオススメ」といった言葉をよく見かけますが、それは他のBluetoothキーボードすべてに対しても言えることではないでしょうか。

iPadのキーボードを考慮する段階として、
まず「スクリーンキーボードに対する物理キーボード」があり、
次に「一体型か分離型か」があり、
そして「Apple純正かどうか、Smart Connectorかどうか、背面ケースもあるかどうか、角度調節、キーボードの機能性、Pencilホルダー、価格etc
というような流れがあると思います。


ここで「一体型キーボードを選ぶ」という前提で、Smart Keyboardはどんな人に向いているのか、どんな利用スタイルを想定してデザインされているのかを、僕なりに分析していきます。

当レビューでは「抜群の変形性、柔軟性、取り回しの良さ」を始めに持ってきて強調しましたが、
Smart Keyboadの最大のメリットはそこにあると思っています。


他社の一体型キーボードの目的が
iPadをラップトップコンピュータのように高機能化する
だとすれば、
Smart Keyboardの目的は
タブレット端末が持つ取り回しの良さを活かした上で、物理キーボードも付加する
ではないかと考えました。


他社製キーボードの多くはキーボードとしてはたしかに高機能なんですが、
基本的にダサく、重く、分厚く、プラスチッキーで、iPadがもともと持ち合わせている雰囲気と機動性を殺す、と表現できうるものです。

お手軽な一枚板を、従来のマウスと電源ケーブルが不可欠なノートPCに引きずりおろしてしまう、と極端に例えればわかりやすいでしょうか。


ipad pro, 10.5, smart keyboard


スリム?


対してSmart Keyboardは、
iPadの軽さ・お手軽さを壊しすぎず、取り回しの良さ・柔軟性を拡張し、簡素だけど物理キーボードまで備え、それでいて自己主張しないカバー
という捉え方のほうが適切かもしれません。


逆説的ですが、Smart Keyboardはキーボードアクセサリーでありながら、最大のメリットは実はキーボードではないところにある、というわけです。

フットプリントが小さく耐水性を備えている点は、まるで「カフェの小さいテーブルでコーヒーを飲みながらコンピューティング」を想定しているかのような仕様です。

10.5インチiPadは生産系コンピュータデバイスの中でもトップクラスの薄型軽量の部類に入るのは明らかですが、
そのタブレットのための一体型キーボードとしては、最も理想的なデザインをAppleは実現していると思います。


どのキーボードメーカーも背面カバー(もしくはそれに相当するもの)を用意することで一体型を実現しようとしますが、その時点で厚みと重量が増し、見た目もゴツくなります。

背面ケース装着型だと、iPadの見た目は間違いなくゴツゴツしくなります。


それに対し、一枚のカバーで、キーボード搭載だけでなく本体を支える役割まで備え、さらにいくつもの使用モードまで実現しているのがSmart Keyboardです。

そして「Smart Cover」と「他社の一体型キーボード」の間に位置するのが、Smart Keyboardと言えるでしょう。


これは裏返せば、キーボードの機能性に特化した外付けキーボードではないということになります。
外付けキーボードとなれば、ユーザーとしてはキーボードの機能性に期待するのが当然だと思いますが、ここが罠ではないでしょうか。

Smart Keyboardは軽量さ、可変性を高めるためにキーボードの機能性を最小限におさえた設計のため、
キーボードの機能性を期待して購入すると痛い目にあうわけです。


要するに、Appleのキーボードカバーに対する意図と、ユーザーのキーボードカバーに対する意図にズレが生じてしまいやすいんです。
Smart Keyboardに対する賛否両論の激しさの原因のほとんどは、ここにあるのではないかと思います。

「キーボードの機能性」に比重を置いて捉えてしまうと、Smart Keyboardの良さを見い出すことは難しくなってしまうように思います。

また先ほど『健康上、最悪』と言ったように、あまりに直角的なこの一枚に、人間工学的な期待・要求は禁物です。
Smart Keyboardが存在する目的はそこにはありません。


ペンシルホルダーは、バンド型で自分の気に入ったものを探せばなんとかなります。


AppleもSmart Keyboardの良さをうまく伝えることができていないように見えますし、そもそもバタフライキーボードやApple Pencilほどアピールに力を入れていないようにも見えます。
おまけにiPad Proの「PC replacement」を喧伝する動画広告は低俗な印象を受ける始末。

本気で「PC replacement」を目指すなら、多少は重量と可変性を犠牲にしても、バタフライキーボードと角度調節を備えた別モデルを出しても良かったのではないかと思いますし、
少なくとも「白」を追加しないのはナンセンスだと思わずにはいられません。



12. どんな人に向いているのか



というわけで『Smart Keyboardはどんな人に向いているのか』に対する僕なりの回答は、
とりあえず物理キーでタイピングできれば良く、あとはiPadとの一体感とモバイル性を重視し、タブレットならではの様々な利用スタイルに付いていける一体型を求める人
となります。

Smart Keyboardを選択肢に入れる場合、まずは「キーボードの機能性」と「一体型としてのモバイル性・可変機動性・ファッション性」の2つを分離し、その上でどちらが自分にとって大切なのかを吟味する必要があるかと思います。

一方、キーの打ち心地は独特でファブリックの馴染みの問題もあるため、ここはどうしても使ってみないとわからないかもしれません。


ただしこれらは10.5インチ版においての話であって、12.9インチについては言及していません。
13インチレベルではサイズ感も重量も取り回しの具合も別物となってしまうため、12.9インチ版Smart Keyboardについてはノーコメントです。


10インチタブレットの一体型キーボードは、キーボードのスペースの制約、厚みの制約、重さの制約、そしてキーボードよりも重いタブレット本体を支える問題、角度調節の問題と、物理的条件がかなりシビアな世界です。

その結果、どうしても様々な点でトレードオフが発生してしまうので、
それを受け入れた上で自分の使用スタイルと照らし合わせ、もっとも利便性を享受できそうなものを選んでいくしかないようです。


当記事ではSmart Keyboardを高く評価していますが、前にも述べたように完璧だとは思っていません。
しかし極端に言えば、Smart Keyboardが登場する以前から、iPad専用一体型キーボードには様々な点で「本当に良いもの」は1つもなかったと思います。

belkinのUltimate Proのように16000円台というトップクラスの高価格帯のものを選んでも、全体としての取り回しの良さ・軽さ、キーボードの機能性どちらの点においても理想に対する欠点は多く、なんだかんだストレスも高めでした。

1万円を超える価格でも背面ケースが安っぽく、薄くてすぐ割れそう、といった意見のあるキーボードケースも多々あります。


iPadを屋内だけでなく、ショルバーバッグに入れて持ち出し、頻繁に出し入れをし、頻繁にカメラも使い、なおかつ頻繁にタイピングをする身としては、現状Smart Keyboardほど最適な一体型アクセサリーはないと思っています。

筆者のように「お金を余分に出してでもより良い一体型キーボードが欲しい!」という人にとって、Smart Keyboardの存在価値はとくに大きいと思いますね。
何度も同じようなことを言いますが、一体型キーボード市場は、平均的に質が低く、「ドッシリと重い」ほうへ偏りすぎなんです。


Ultimate Proは輸入代含めて18000円以上しましたし、先に述べたように理想に対する欠点もたくさん見つけはしましたが、2年半の使用期間は満足度の高いものでした。

そして10.5インチ版Smart Keyboardは、すでにそれ以上に満足度が高いです。

特に素材が素材なので、打ち心地においてもスタンドモードの安定感においても、Smart Keyboardは使い込んで柔らかくし、馴染ませるほど、使い心地が良くなっていく製品ではないかと思います。







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